今日はPMSに対する抗うつ薬の治療についてお話をし、PMSのシリーズをおしまいにします。
月経前の2週間だけひどく気持ちが落ち込むなどの症状がピル等ではなかなかコントロールできない場合、抗うつ薬のSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)を使うとすごく良く効く場合があります。SSRIはセロトニンという脳内神経伝達物質の減少を抑える薬です。このセロトニンが足りなくなると、抑うつ、不安、緊張、イライラなどが高まりやすくなったり、痛みを感じやすくなったりするので、SSRIは主にうつ病の治療薬として使われているわけですが、PMSはうつ病ではないので毎日服用する必要はなく、症状の出る月経周期後半の2週間だけとかという使い方をします。抗うつ薬を処方されると「わたしうつなの?」とびっくりさせてしまうことがあります。くりかえしますが、うつではありませんが抗うつ薬の作用メカニズムがPMSに有効である場合があるというだけです。
ここ数回、月経前症候群(PMS:PreMenstrual Syndrome)についてお話させて頂いてきました。まず、PMSは「ホルモンバランスの乱れが原因ではなく排卵を抑えるといい」ので、ピル、中でも「ドノスピレノン含有」のものが良いと紹介しました。つぎに漢方薬についてざっと述べました。随伴する症状に合わせ、患者さんと一緒にオーダーメイド的に見つけていっています。そして、前回、利尿作用に着目したサプリの紹介もさせて頂き、今回抗うつ薬の話をしました。
最後に一番大切な日常生活です。
適度な運動、適切な睡眠が大切なことは言うまでもありませんが、特に食事について。
イライラすると甘いものが欲しくなるので、PMSの方は特に月経周期後半、チョコなど甘いものの摂取が多くなりがちです。甘いものを食べ過ぎるとその調整でダイエット、特に主食つまり炭水化物、タンパク質を控えてしまう方がいます。甘いものでは当然血糖値が上がり、炭水化物を控えると血糖値が下がります。この血糖値の変動もイライラの原因となるのです。アルコールの摂り過ぎも同様です。またタンパク質は、抗うつ薬のところで触れた脳内神経伝達物質セロトニンの原料です。ですからタンパク質を控えるということはセロトニンが足りなくなることに通じます。要は甘いもの、アルコールの摂り過ぎには用心して頂きながら、是非、きちんと三度三度の食事は適切に摂って頂きますようお願いします。
猛暑も出口が見えてきました。適度な運動を始めるなど生活改善にはもってこいの季節になります。無理のない範囲で出来ることから始めてみてはいかがでしょうか?
根本産婦人科医院 院長 根本 将之