本日は子宮内膜症について。
子宮内膜症の「子宮内膜」とは子宮の真ん中にある膜です。膜というくらいですから元々はとても薄いのですが、月経周期に伴ってだんだんと厚くフカフカになります。厚くなるのは受精卵を着床させやすくするためで、もし受精卵が来なければ厚くなった内膜は剥がされ元の薄い膜に戻ります。この厚くなっていた分の内膜が排出される現象が月経です。子宮内膜を含む血液が子宮口から出るのが月経血ですが、一部お腹の中に出てしまうことがあります。どうしてお腹の中に出てしまうかは未だ全て明らかにはなっていませんが、卵管から逆流してしまうことなどが考えられています。お腹の中に出てしまうと子宮壁、卵巣、卵管、腹膜、その他の臓器にくっついて増殖し、腹腔内の癒着、炎症を引き起こし痛みの原因となります。これが子宮内膜症です。手術でお腹の中を見てみると、むしろ子宮内膜がお腹の中に全く見られない方のほうが稀で、全ての女性は子宮内膜症ではないかと思うほどです。では子宮内膜症としての症状が全くない方と強く出る方がいるのは何故でしょう。通常、お腹の中にあるべきではない組織がお腹の中に出現すると免疫の力が排除してくれるはずですから、そういった免疫の差が関係しているのではないかという説もありますが、これもまだ良く分かってはいないのです。
子宮内膜症が発症する場所は様々です。横隔膜や腸管内、なんと肺から内膜症の組織が見つかったこともありますので本当に様々ですが、多いのはやはり子宮壁、卵巣、卵管です。ですから、やはり生理痛がひどくなり日常生活に支障が出てきたという段階で受診され、子宮内膜症ですね、と診断される方が圧倒的に多いわけです。患者さんにしてみれば、市販の痛み止めで何とかなってるから病院にかかるほどではないと考えるのは無理もありませんが、痛み止めは痛みを取っているだけで、上で述べた子宮内膜症の根本原因に対処しているわけではありません。つまり痛みが取れて治ったと思っている間にも内膜症が進行している可能性があるということです。以前にも述べましたが、厚生労働省の調査によると、月経困難症の患者数は推定800万人以上とされていますが治療を受けている人はその10%程度にすぎません。また海外のデータではありますが、機能性月経困難症と診断された患者さんの実に約70%が子宮内膜症を発症していることもわかっています。早めの受診が望まれます。
来週はこの続きを。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之