今日は思春期から低用量ピルを始めるにあたり、皆様からご質問が多い点についてお話しましょう。
まず、一般的に想定されている初期の副作用として、嘔気、嘔吐、頭痛、不正出血などがあります。生活に支障を来すほどの症状がありましたら、ピルの種類を変えるなどお話を伺いながら対処して参りますので遠慮なくご相談下さい。ただしこのような飲み始めの不都合は、飲み始め2~3カ月もしますと無くなってくることが多いですので、可能なら頑張って頂くと良いと思います。また長期服用すると血液の凝固能が高まる可能性があることも重要な副作用として挙げられます。詳しくは以前のコラムでお話しましたのでそちらも参考にしていただきたいですが、低用量ピルの長期服用で血栓症を発症する確率は0.05%程度、さらに当院では定期的な血液検査で確認しながら安全にお使いいただいておりますのでご安心を。ただ残念ながら、今はネット等で出所不明のピルを個人で入手し、医師のチェックなしで使っている方もおられるようです。ご自身の健康のためにも定期的に血液検査をしながら、医師の管理の元使って頂くことが重要です。一度失った健康を取り戻すのは容易なことではない場合が多いですから。
その上で思春期のお子さんにお使い頂く際、心配される方が多いのは骨形成に対する影響です。2023/11/10のこのコラム、更年期のところで詳しく説明しましたが、女性ホルモンであるエストロゲンには骨の新陳代謝を調整する働きがあります。ですから骨が盛んに形成される時期にはピルを含むエストロゲン製剤は使いづらいわけですが、初経後には成長期の骨成長が終了していると考えられるため骨形成に関しての心配はありません。前回紹介した、「初経後3カ月が経過すれば安全に使用できる」というWHO(世界保健機構)等の見解はそのような意味でもあります。むしろ骨形成には適切な量の運動が不可欠なので、月経痛等で動かなくなることが骨の成長に良い影響を与えないということは十分に考えられることです。
またピルは避妊でお使い頂く方が多いお薬ですので、ピルで妊娠できなくなることを心配される方がものすごく多いです。もちろんピルには高い避妊効果がありますが、妊娠をご希望される時期になったら服用を休止することで必ず妊娠する力は戻りますのでこちらもご安心を。むしろ、これまで何度も述べましたが、ピルは妊娠する力を維持するためにも早くからの使用して頂きたいお薬です。
さらに都市伝説的に「ピルは太る」というのがあるようですが、完全な都市伝説です。ただしピルによっては「むくみ」が出る場合があります。その場合はピルの種類を変更すれば改善しますし、むしろむくみの改善にピルを処方することもあるくらいです。またニキビが多くなってしまう方もおられますがこちらも同様です。ニキビの改善に有効なピルがあります。
このように、基本的にはピルは大変に安全なお薬ではありますが、数あるピルの中で適切なピルを選択していくことが大切です。良いお薬ですので、専門知識と多様な患者さんへの処方経験を持つ専門医の管理の元、適切かつ安全に使用して頂きたいです。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之