先週より、現在の安易な性活動により急増が見られている梅毒についてお話しています。マッチングアプリ、SNSに影響された風潮からの爆発的な感染拡大が起こっており、ある調査では「9人に1人」が梅毒はじめクラミジア、りん病など何らかの性感染症にかかったことがあるという驚くべき結果もでているほどです。特に梅毒に関しては、最新のデータでの感染者数が、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、過去最多となっています。
前回は症状等について触れましたが今回は検査、治療等について。
まず「予防法」。梅毒は性感染症、スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマという病原体の感染が原因です。性行為感染症ということは感染経路が性行為であるということですから、この原因菌に暴露しないようにコンドームを使用することがとても重要なことです。ちなみに避妊のためにピルを飲んでいてもそれでは性感染症は予防できません。性交時にコンドームを装着することが感染予防に繋がります。
そして「検査」。血液検査などで比較的感染初期から診断することが出来ます。ただ先週お話した通り、感染初期には症状が出ないことが多いですから、症状が無くても心配な時は速やかに検査を受けて下さい。特にパートナーに梅毒の感染が判明したら、自分も梅毒に感染している可能性があります。早めに検査を行い、陽性であれば必ず治療を行いましょう。治療は2人同時に行わないとパートナー間で感染を繰り返す(せっかく治しても行ったり来たりするのでピンポン感染といいます)ことになるため、早めの治療を心がけてください。性感染症で病院を受診しようかと思っても、「恥ずかしい」「受診すべき症状かどうか」「どの医療機関にかかるべきか」などというハードルがあるかと思います。医師がどこでうつったかなどということを聞くことはありませんので、心配せず、病気を治すために来ていただきたいと思います。婦人科以外でも泌尿器科、性病専門クリニック、そして保健所でも受けることができます。
次に「治療法」。梅毒トレポネーマという病原体の感染が原因ですので、この菌に対する抗生剤であるペニシリン系薬剤(アモキシシリン)を数週間内服するという治療となります。最近では1回の注射でも治療が可能になっています。梅毒は初期感染の段階で治療を行うと完治できる病気ですが、進行すれば神経症状、心臓や血管の症状が現れ菌に対する治療だけでは収まらない場合もあります。早めの検査、診断、治療がのぞまれます。最近ではネットなどの情報から自分で判断して、自分で的外れな抗菌薬を使用し一向に治らずやっと受診するなどのケースが見受けられます。抗生剤は原因菌に対して効果のある抗菌剤等を使うことが大事ですので、関係ない菌に対する抗生剤を延々と飲んでいても治るわけがないということになります。また量、服薬の期間、そして効果判定も重要です。全然合っていないと、治るものも治らないということになります。
次回は妊娠中の梅毒感染についてお話しましょう。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之