ドクターコラム

2024.07.19更新

うっとおしい梅雨もあと少しでしょうか?
前回まで数回にわたってRSウイルス、梅毒、劇症型溶血性レンサ球菌感染症など、このところ増えてきたのでご注意頂きたい感染症についてお話してきましたが、この間にもう一つ、手足口病流行の兆しが顕著になってきました。近年大きな流行がなかったので、逆に感染したことのない方が増え一気に広がっていると考えられています。流行はあと1か月ほどは続く可能性があるようですので、今日はこの時期としては過去10年で最も多くなっている手足口病について。

手足口病は、コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなどといったウイルスに感染することにより、口の中や手足の水疱性湿疹や発熱といった症状があらわれます。英語でも hand, foot and mouth disease と言います。同じなんだな、というよりは日本語名が安易な直訳なの?と思ってしまいますが、いずれにしても発症する部位を現わしています。保育園や幼稚園での集団感染がニュースで話題にのぼることが多いことから分かるように、子どもに多い感染症という印象です。
とはいえ、大人は絶対に感染しないというわけではありません。飛沫感染や接触感染、排せつ物からの感染などが経路として考えられるため、小さな子どもがいる家庭では、大人であっても手足口病にかかってしまったお子さんからうつることがあります。
ですので、特にお子さんがおられる妊婦さんには正しい知識を持って頂きたいと思います。まず、妊娠中に手足口病に感染してもウイルスそのものが赤ちゃんに影響を及ぼすことはないとされていますのでご安心を。ただし、妊娠中の手足口病感染は症例数が少なく大規模な研究成果はまだありません。従いまして胎児異常との正確な因果関係も医学的にはまだ未知であると言えます。ですから念のための注意は必要です。
残念ながら手足口病には特効薬がまだありません。が、症状は軽く、経過観察しながら自然に治まるのを待ったり、必要に応じて症状にあわせた治療を行ったりすればこと足りるケースがほとんどです。内科など別の病院を受診するときは必ず妊娠中である旨伝えてください。
治療薬はありませんので、いずれにしても予防が大切ということになります。手足口病は接触感染や飛沫感染によって広がるため、まずは基本的な風邪予防、つまりうがい、手洗い、マスクですね。親子ともども励行しましょう。
その上で特にお子さんが手足口病にかかっている場合、排便後にはとくにしっかり手を洗うように伝えましょう。手足口病は症状がなくなったあともしばらくはウイルスが体内に残っていますので、治ったあとも数週間は体液や便からウイルスに感染する可能性は否めません。特にお子さんがおむつをしている場合、おむつ交換時にはマスクやビニール手袋を使用する、外したおむつはすぐに包んで家の外のゴミ箱に捨てるなどして、家の中にウイルスが残らないように工夫をしましょう。吐しゃ物の片付けについても同様です。またタオルを分けるということも重要です。家族全員でひとつのタオルを使用しない、お風呂で一緒のお湯につからない、といったことも手足口病の対策になります。

妊娠中は抵抗力が低下していますので、特にお子さんがいらっしゃる妊婦さんは一応気をつけておきたいですね。妊婦さんが手足口病に感染する可能性は決して高いわけではなく、たとえ感染したとしても自然と治まる場合がほとんどです。心配し過ぎることはありませんが、心配しすぎず安心しすぎず、心配な時はいつでも医師にご相談ください。
根本産婦人科医院  院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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