「月経困難症の原因②子宮腺筋症〜女性が知っておきたい疾患〜」
このところ月経困難症についてお話させていただいています。いわゆる生理痛のことですが、生理のたびに強い痛みなど生活に支障が出るほどになったら月経困難症ですね、ということは以前に述べました。この月経困難症の原因として、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などがあり前回の子宮筋腫に続いて、今回は子宮腺筋症について述べます。
子宮腺筋症は一言でいえば「子宮の筋肉が厚くなる」疾患です。子宮筋腫は子宮の筋層に筋肉の瘤(こぶ)が出来ますが、子宮腺筋症は子宮の筋肉そのものの全体または一部が厚くなる状態です。子宮筋腫と同様に良性の腫瘍でがんではありませんが、女性ホルモンによって大きくなりますので少なくとも月経のある間は子宮筋層が厚くなり、結果として子宮全体が大きくなる可能性が高いです。原因としては、子宮内膜のような組織が子宮筋層に発生し、そこに女性ホルモンが作用し病変部位およびその周囲の子宮筋層が肥厚する、などが考えられています。この子宮腺筋症病変による子宮内膜の拡張・変形、子宮筋の線維化による子宮収縮のアンバランス化などで、子宮収縮が異常に亢進し、月経過多、不正出血、月経困難などの症状が引き起こされることが想定されています。
治療法も子宮筋腫とほぼ同様です。前回のコラムを見てみて下さい。
薬物療法について追加を2つ。
まずGnRH アゴニストです。GnRHとは卵巣から出される女性ホルモンを調整するために脳から出ているホルモンです。このGnRHを抑えることで女性ホルモンを抑えるということです。子宮腫大に対する縮小作用は最も有効とされますが、抗エストロゲン作用の副作用としての骨量減少の懸念から、最長6カ月間という投与制限があります。当院ではレルミナを採用しており、皆さんに大変喜んで頂いています。
次にLNG-IUSです。これは主に排卵後に分泌されるプロゲステロンというホルモンを付加したT字型の子宮腔内装着器具です。一度装着すると、毎日平均20㎍のプロゲステロンを子宮腔内に5 年間放出し、子宮内膜を萎縮・菲薄化させることで、過多月経・月経痛・慢性疼痛・子宮腫大のいずれにも有意な改善が示されています。ですので定期的にチェックはしなければいけませんが、一度入れたら不都合無い限り5年間入れたままです。ネットには装着時痛みを伴うといったことが載っているようでドキドキしながら来院される方もいらっしゃいますが、私が実施した方に痛みを強く訴える方はいませんし、その後は入ってることも意識することなく過ごす方がほとんどです。ただ大きな子宮筋腫があると装着できないことがあります。当院ではミレーナを採用しています。
次回は子宮内膜症についてお話します。
本年のコラムは今回で最後です。また来年。
どうぞ良いお年をお過ごしください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之