ドクターコラム

2024.06.28更新

先週より、現在の安易な性活動により急増が見られている梅毒についてお話しています。マッチングアプリ、SNSに影響された風潮からの爆発的な感染拡大が起こっており、ある調査では「9人に1人」が梅毒はじめクラミジア、りん病など何らかの性感染症にかかったことがあるという驚くべき結果もでているほどです。特に梅毒に関しては、最新のデータでの感染者数が、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、過去最多となっています。

前回は症状等について触れましたが今回は検査、治療等について。
まず「予防法」。梅毒は性感染症、スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマという病原体の感染が原因です。性行為感染症ということは感染経路が性行為であるということですから、この原因菌に暴露しないようにコンドームを使用することがとても重要なことです。ちなみに避妊のためにピルを飲んでいてもそれでは性感染症は予防できません。性交時にコンドームを装着することが感染予防に繋がります。
そして「検査」。血液検査などで比較的感染初期から診断することが出来ます。ただ先週お話した通り、感染初期には症状が出ないことが多いですから、症状が無くても心配な時は速やかに検査を受けて下さい。特にパートナーに梅毒の感染が判明したら、自分も梅毒に感染している可能性があります。早めに検査を行い、陽性であれば必ず治療を行いましょう。治療は2人同時に行わないとパートナー間で感染を繰り返す(せっかく治しても行ったり来たりするのでピンポン感染といいます)ことになるため、早めの治療を心がけてください。性感染症で病院を受診しようかと思っても、「恥ずかしい」「受診すべき症状かどうか」「どの医療機関にかかるべきか」などというハードルがあるかと思います。医師がどこでうつったかなどということを聞くことはありませんので、心配せず、病気を治すために来ていただきたいと思います。婦人科以外でも泌尿器科、性病専門クリニック、そして保健所でも受けることができます。
次に「治療法」。梅毒トレポネーマという病原体の感染が原因ですので、この菌に対する抗生剤であるペニシリン系薬剤(アモキシシリン)を数週間内服するという治療となります。最近では1回の注射でも治療が可能になっています。梅毒は初期感染の段階で治療を行うと完治できる病気ですが、進行すれば神経症状、心臓や血管の症状が現れ菌に対する治療だけでは収まらない場合もあります。早めの検査、診断、治療がのぞまれます。最近ではネットなどの情報から自分で判断して、自分で的外れな抗菌薬を使用し一向に治らずやっと受診するなどのケースが見受けられます。抗生剤は原因菌に対して効果のある抗菌剤等を使うことが大事ですので、関係ない菌に対する抗生剤を延々と飲んでいても治るわけがないということになります。また量、服薬の期間、そして効果判定も重要です。全然合っていないと、治るものも治らないということになります。

次回は妊娠中の梅毒感染についてお話しましょう。
根本産婦人科医院  院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.06.21更新

こんにちわ
みなさんは梅毒(ばいどく)という感染症を聞いたことがあるでしょうか?ご存じの方も、梅毒というと昔の病気のイメージがあるかもしれません。しかし実はこのところ過去に例がないほど爆発的な勢いで増えています。梅毒は主に「性行為」で感染しますが、コロナ禍後、マッチングアプリ、SNSの影響で奔放な性活動が活発になったことが原因であることが分かっています。
経過の中で皮膚に赤〜ピンク色の湿疹が出現し、この発疹が楊梅(ヤマモモ)の実に似ていることから梅毒と呼ばれています。発症部位は口やのど、陰部などが多いですが、無症状、そして症状が見えにくい場合もあります。
具体的には性器同士の接触、口や肛門の接触、それからキスによってうつることもあります。梅毒は感染から2〜6週間の潜伏期間を経て発症。最初に侵入した箇所で増殖したのち、リンパ節や血流を介して全身に広がります。梅毒の感染経過は第1期〜第4期に分けられています。初感染から3ヶ月以内の時期を第1期といいます。この時期の多くは無症状なので気がつきません。第2期は感染後3ヶ月から3年の期間をいいます。この時期に出る皮疹が赤〜ピンク色の湿疹ですが、出現部位が性器などなかなか自分の目にはつかないところのこともあり、また痛みもありませんので、それを性感染症の症状と自覚せず放置してしまうことも多いです。放置してしまうとさらに進行し、さらに性感染症が広がる1つの理由になっていると考えられています。梅毒は初期感染の段階で治療を行うと完治できる病気ですが、進行すれば様々な症状がでます。そして第3期、4期など末期ともなれば神経症状、心臓や血管の症状が現れることがあります。
繰り返しますが、梅毒は性行為感染症つまりセックスでうつる病気です。性病というとどうしても不特定の方と性行為を行うような限られた方がなる感染症と思われている方が多いと思います。しかし感染した人の中で、配偶者や恋人などの「特定のパートナーとしか性行為をしていない」と答えた人が、男性では49%女性では84%という結果が出ました。今のパートナーはとても誠実で信頼できる方であったとしても、そのパートナーの前の彼女、のその前の彼氏、のその前の彼女・・・がどんな方とお付き合いしていたかなどたどることは出来ませんので、ごく普通の生活をしていても知らず知らずのうちに感染してしまっていることが十分にあり得るのです。ましてや不特定の相手と性行為をする人は、特定のパートナーとだけ性行為をする人に比べて、感染した経験のある割合がおよそ1.8倍に上ったという調査結果もあります。

こうした中で、私たちは自分、そして大切な人の体をどう守ればいいのでしょうか?次回は予防、検査、治療についてお話しましょう。
根本産婦人科医院  院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.06.14更新

季節の変化についていくのが大変ですね。
今日は⼥性の排尿の問題、尿失禁について。

尿失禁とは尿が漏れてしまう状態を指します。咳やくしゃみ、重いものを持ち上げたとき、運動などおなかに⼒が⼊ったときに、ちょっとだけ尿がもれてしまった、突然の尿意でトイレまで間に合わなかった、などのご経験はありませんか?日本では女性の30~40%が何らかの形で尿失禁の経験があるとされており、日常生活に支障が出て非常に困ってしまう場合もあります。
女性の尿失禁にはいくつかの原因があります。
まずは「おなかに⼒が⼊ったときに尿がもれてしまった」、このような状態を腹圧性尿失禁といいます。尿をためる膀胱の出⼝が緩んでしまったためにもれてしまいます。妊娠後期や産後にはかなり多くの⼥性が⼀時的に経験しますが、その後しだいに回復することが多いです。しかし妊娠・分娩による⾻盤底筋のゆるみ、その後の肥満、加齢による影響などが関係して起こりますので、年令とともに症状が再発することも多く、腹圧性尿失禁は30歳以上の⼥性の3⼈に1⼈は経験があり、40歳を超えるとさらに増加する傾向にあると言われています。
腹圧性尿失禁は治せる病気です。症状の軽い⼈は⾻盤底筋体操という⾻盤底筋群を強化する体操でかなり改善されますし、予防法としても効果があります。当院では骨盤底筋体操の指導をしていますのでご相談下さい。また尿失禁で来院し、骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱脱)があることが分かることもあります。そのような場合、骨盤底筋体操と共に、下がってしまった子宮、膀胱をリングで上げてあげることで症状が緩和されることも多いです。
他には「急に我慢することができない強い尿意が⽣じトイレまで間に合わなかった」ことがあるという方も多いと思います。このような症状を切迫性尿失禁といいます。トイレで下着を下ろす間もなく我慢ができずにもれたり、⽔の流れる⾳を聞いたり、⼿洗いで⽔に触れるなどの刺激で尿意切迫感がおきやすくなります。また尿意切迫感があって、これに頻尿をともなう状態が過活動膀胱です。過活動膀胱では、尿意切迫感や切迫性尿失禁を気にして早めにトイレに通うようになり頻尿となりますが、軽度の場合などは少しずつ排尿間隔を延⻑することにより膀胱容量を増加させる膀胱訓練も有効です。さらに尿を出したいにも関わらず尿が少しずつ漏れる溢流性尿失禁、身体的な障害や認知症などによりトイレに間に合わない機能性尿失禁など、症状が強い場合は腹圧性尿失禁とは違って症状や原因に応じて薬や⼿術療法など適切な治療を選択することが重要です。

尿失禁は生命に直接影響するわけではありませんが、日常生活の質(QOL)に大きく影響を及ぼすことは言うまでもありません。遠慮せず、恥ずかしがらず、症状があれば一度ご相談下さい。
根本産婦人科医院  院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.06.07更新

不順な天気が続きますね。
このコラムも1年になります。外来で皆さんにご質問頂いた点、季節的にご注意頂きたい点、報道があった点などふと思いついたことについてランダムにお知らせしてきたので、1年目の節目にここらで一度項目の確認をと思いまして、今日はこれまでの項目を並べてみました。

2023/06
02更年期障害(総論)
09更年期障害(漢方)
16更年期障害(プラセンタ)
30更年期障害(HRT)
2023/07
07急報!子宮頸がんワクチンを受けて下さい!!
14急報!子宮頸がんワクチンを受けて下さい!!第二弾
21更年期障害(HRTの副作用)
28更年期障害(鍼灸、アロマセラピー、サプリ)
2023/08
04女性の「隠れ我慢」
18 PMS(総論1)
25 PMS(総論2)
2023/09
01 PMS(ピル)
08 PMS(漢方)
15 PMS(サプリ)
22 PMS(抗うつ薬)
29雑談(漢方薬について)
2023/10
06 外来で多く質問いただくことについて(不正出血・排卵確認・月経移動)
13インフルエンザ
20妊娠中のインフルエンザ対策
27更年期について再び
2023/11
10更年期以後にご注意いただきたいこと
17早発閉経
24手のしびれ、痛み、腫れ
2023/12
01卵子凍結
08月経困難症
15 子宮筋腫 
22子宮腺筋症
2024/01
12子宮内膜症
19思春期の月経困難症1
26思春期の月経困難症2
2024/02
02思春期の月経困難症3(低用量ピル1)
09思春期の月経困難症(低用量ピル2)
16低用量ピルの連続投与
23ダイエット
2024/03
01思春期のダイエット
08子宮頸がん検診
15プレコンセプション1
22プレコンセプション2
29子宮頸がんワクチン再び
2024/04
05人工妊娠中絶薬
12 子宮体がん
19妊娠高血圧症候群
26切迫早産について。
2023/05
10子宮脱
17マタニティブルーズと産後うつ
24妊娠中のスマートフォン
31妊婦さんに接種する RS ウイルスワクチンについて

皆さんの使い勝手が良くなれば幸いです。
根本産婦人科医院  院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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