ドクターコラム

2021.10.25更新

当院で子宮頸がん予防ワクチンの接種を再開します。

日本国内の子宮頸がんの患者さんは、年間13,000人程度(2017年)、亡くなる方は、年間2,800人程度(2018年)と報告されています。

特に若い年齢層(20~39歳)で患者さんが増えており、年代別にみた患者さんの数は、20代後半から増えていき40代でピークを迎えます。

つまり、まだ小さいお子さんをお持ちの年代の若い女性を襲うがんなのです。

 

子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスが90%以上の確率で関わっています。

このウイルスは一般に性行為を介して感染することが知られており、海外の報告では性行為の経験がある女性の50~80%が、生涯で一度はHPVに感染すると報告されています。

 

したがいまして、子宮頸がんを予防するには、感染前にHPVワクチンを接種することが大変に有効な方法となります。

そこで性行為の経験のまだない内に接種することで有効性が高まるため、小学校6年生~高校1年生になる年度に公費でワクチン接種を行えるようになっています。

しかし、かつてHPVワクチン接種後に、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動等を中心とする「多様な症状」が起きたことが報告され、2013年以降、長い間日本ではこのワクチン接種が事実上中断されていました。

この間、ワクチン接種を継続していた海外では圧倒的な子宮頸がん罹患者の減少がみられ、オーストラリアでは2028年までに子宮頸がんが撲滅されるとの予測が立つほどに至っています。

このように世界中で日本の女性だけが取り残されたまま年月が経ってしまいましたが、この間、日本でも積極的勧奨はしないものの、定期接種(国の無料ワクチン接種プログラム)は継続しています。

また長年の研究調査で、ワクチン接種に伴う「多様な症状」に「ワクチン接種との因果関係がある」という証明がなされていないことから、女性の健康を守るという観点からも、当院でHPVワクチン接種再開を決定した次第です。

なお、ワクチンにはガーダシルⓇとシルガードⓇ9があります。

HPVには100を超える型が判明していますが、子宮頸がんの原因となるHPVの型の内、ガーダシルⓇには65.4% シルガードⓇ9には88.2%の予防効果が認められています。

現在、定期接種(国の無料ワクチン接種プログラム)の対象になっているのは、ガーダシルⓇのみです。

シルガードⓇ9は諸外国では公費負担となる国が増えていますが、日本の現状では自費(3回接種で10万円)となります。

よくご検討ください。

なお、シルガードⓇ9につきましては、全例登録システムに加入頂き、接種後もより注意深く観察させていただきます。

特に来年高校1年生になる女子におかれましては、3回の接種を定期接種(無料)として完了するには来年9月中に初回接種を開始する必要があります。(ガーダシルⓇ自費接種は3回で5万円)

 

以上、様々、ご不安な点もあろうかと存じますが、気軽にご相談ください。

 

 

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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