ドクターコラム

2024.03.01更新

思春期は、将来、妊娠・出産ができる体をつくる時期というだけではなく、一生を通した体作りに大切な時期です。女性ホルモン、エストロゲンには丸みを帯びた女性らしい身体作り、頭髪や皮膚に潤いを与える等、健康的な身体を作る役割があります。思春期に女性の顔や体がふっくらと丸みを帯びてくるのは、将来の妊娠・出産にそなえての準備であり、けっして肥満なわけではなく正常な変化です。この女性の身体にとって大変に大事な時期である思春期に、不適切なダイエットや食事が偏ったりしますと当然様々な支障が出てきます。

前回、急激な体重減少により生理が止まってしまうのは、ある意味、身体のシステムが引き起こす防御反応のようなものですというお話をしました。そのメカニズムの一つが女性ホルモンの減少です。女性ホルモン(主にエストロゲン)は、生理をうまく回したり、妊娠する条件を整えたりするだけではなく、骨形成およびコレステロールを分解する働きを持つことは以前このコラムで述べました。
骨形成については骨粗しょう症のところで触れました。骨も皮膚や髪と同じように新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨は壊され、新しい骨が補われています。この古くなった骨を壊す細胞を破骨細胞といい、新しい骨をつくる細胞を骨芽細胞といいますが、この破骨細胞が骨を壊すスピードと、骨芽細胞が骨をつくるスピードの絶妙なバランスで骨量が安定し強さが保たれているのです。一方、エストロゲンには破骨細胞の働きを適度に抑制する働きがあります。つまりエストロゲンが少なくなると、骨を壊すスピードが抑制されず壊され過ぎてしまうため骨量が減ってスカスカになってしまうわけです。一方この思春期の時期は、生涯で唯一「骨密度が増える時期」です。そのため、この時期に極端なダイエットをして栄養素が不足した状態が続くと、骨密度が充分に増えることなく生涯を過ごすことになります。骨密度が低いまま高齢期にさしかかると骨粗しょう症になる可能性が高まります。
コレステロールについては更年期のところでお話させて頂きましたが、エストロゲンは肝臓での、特に悪玉コレステロールの代謝を促進する働きをしています。つまりエストロゲンが少なくなるということは、コレステロールが分解されず高コレステロール血症になりやすくなる、つまり将来高コレステロール血症による脳卒中、心筋梗塞等のリスクが高まるということです。

以上、思春期に急激なダイエットをしてほしくない主な理由を挙げさせて頂きました。生涯にわたる健康な体作りが必要な大事なこの時期は、精神的にも揺れ動く難しい時期でもありますね。親御さんとして対応ご苦労されることも多いかと存じます。以前も宣伝しましたが、当院には自身の子育て体験も含め、経験豊富で優秀な女性スタッフがたくさんおります。経験だけではなくものすごく良く勉強しています。最初から医師に相談はハードルが高いという方は、まずはスタッフがお話を聞きますので遠慮なくお越しください。

三寒四温、天候が不順になる時期です。お身体ご自愛ください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.23更新

本日はダイエット、特に思春期のダイエットについてお話しさせてください。最近になって生理が急に来なくなったと来院される中高生の中で、よくよく聞くと急激な体重減少があり、ご本人が無理なダイエットをしていたというケースがまた増えてきているようです。

イタリアでやせ過ぎのモデルはファッションショーに出演できなくなったことなどに象徴されますように、不適切なダイエットは多くの先進国で社会問題になっています。にも関わらず日本の若い女性は「やせすぎ」の傾向にあります。テレビや雑誌、SNSなどの影響を受けてのことであろうと思いますが、若い女性、とりわけ、成長期である思春期の女性が過剰なダイエットをするのは実はとても危険なことのです。
そもそも充分な栄養を摂取しないということが続くと体は低栄養の状態になります。体がこの低栄養状態に長期間晒されますと、体内では様々な機能低下が起こります。貧血・低血圧・不眠・免疫力低下といった症状に加え、精神的にも疲れやすい・無気力・注意散漫などの障害が現れることがあります。
そして無月経です。実は人間の体の中身は原始時代からほとんど変わっていないそうです。原始時代で急激に体重が減少するということは食べるものがないことを意味します。自分が食べるものがないのに妊娠してしまいますと子供を育てられません。ですから妊娠しないようにホルモンが動きその結果生理が来なくなるわけです。ですから急激な体重の減少に続く無月経という現象は、妊娠しないように体のシステムが引き起こしているということも考えられています。人間の体は機械ではありませんから、一度失ったバランスを取り戻すのは容易でない場合があります。ですから思春期の過剰なダイエットは、無月経の一因となり、ひいては将来の妊娠に悪影響を及ぼす可能性があります。仮に妊娠したとしても、子どもが低出生体重になる可能性があります。低栄養なのですから当たり前ですが、実際、日本では若い女性のやせすぎとともに、低出生体重児の増加が問題視されています。この低出生体重児、他の先進諸国では社会が豊かになるにつれ減少しているという事実からしましても、これは日本特有の現象と言えます。さらに低出生体重児は、将来の生活習慣病のリスクが高くなる可能性も示唆されています。無謀なダイエットは将来の自分のお子さんの病気を引きおこす可能性があることも知っておいてください。

また、これまで何度もお話していますが、女性ホルモンは月経・妊娠・出産に重要な役割を果たすことは言うまでもありませんが、それだけではなく女性の健康そのものに重要な役割を果たしています。
次回はこの点についてお話したいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.16更新

冬本番の寒さも一休みといったところでしょうか。少し過ごし易い気候が続いてますね。
本日は低用量ピルの連続投与について。

これまでの「21日間内服後7日間休薬またはプラセボを内服して頂き、消退出血を起こしてからまた次のシートへ」という飲み方を周期投与といいますが、それに対して休薬期間を設けずにずっと飲んで頂く方法が連続投与です。連続的に内服するということは休薬期間が無いので、多くの方が消退出血(月経)が起きなくなります。月経が無いことで、月経痛や過多月経による貧血、PNSなど月経にまつわる不都合もなくなるとことが期待できるので、周期投与で改善が今一つだった方々からまずはお勧めしてきました。この連続投与については、何回かこのコラムで軽く触れては詳しくは又の機会にと後回しにしていましたが、「月経が毎月無くていいの?」というご心配も当然で、そういうお声がチラホラと聞こえてきまして遅まきながら今回ガッチリやりたいと思います。ガッチリと言いましても、結論は「現在すぐの妊娠を望んでいないのであれば、毎月の月経は必要ない」が医学的に正しい言い方になります。そもそも昔の日本人女性は平均約5回の妊娠出産を経験していました。妊娠期間中、授乳期間中は月経が無いので、その分現代の女性に比べ月経回数が少なく、さらに昔の女性は初経が遅く、閉経が早かったことを考慮しますと、昔の女性は現代女性に比べ300回も月経が少なかったという試算もあるほどです。それで昔の女性は何の問題もなかったわけですから、例えば連続投与で10年間月経が無いという期間を過ごしたとしても12×10=120回の月経が無いだけなのです。むしろ、現代の女性はあまりにも過剰な月経を経験させられているという言い方さえ出来ますので、当初は周期投与で効果が今一つの方に勧めてきました連続投与ですが、今後は主流になっていきます。
その他、確認ですが、低用量ピル連続投与中に月経が無いことで月経血や子宮内膜が子宮内にたまることはありません。低用量ピル連続投与の安全性や、血栓症リスクに、周期投与に比べ有意な差はありません。またピル服用中止後の月経再開、妊孕性の回復は周期投与と同じで、連続投与終了後94.7%が2カ月以内に月経再開または妊娠することが確認されています。

とりあえず、現在周期投与中の方で、消退出血前後に不快な症状(痛み、量、PMSなど)がある方は連続投与という選択肢がありますので是非ご相談下さい。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.09更新

思春期からの低用量ピルについてもう少し。

まず低用量ピル内服中に月経量が減少、あるいは月経が来なくなって心配される方がしばしばおられます。受精卵が着床しなかった場合の子宮内膜が排出されるのが月経血ですが、これはピルに子宮内膜を厚くしないという作用があるためで、服用をやめれば戻ってきますので心配することはありません。また月経をデトックスのように感じておられる方が多くおられ、月経が無いことで月経血や子宮内膜が子宮内にたまってしまうのではと心配される方も多いですが、これも明らかに勘違いですね。元々低用量ピルの作用で内膜は薄くなっているわけですから、無いものが出ないのは理にかなったことです。
それどころか、最近では低用量ピルをずっと飲み続ける連続投与という方法が主流になりつつあります。ずっとと言いましても、具体的には約3カ月飲み続け、一度月経を起こしてもう3カ月というリズムです。詳しくはまた別の機会にでもと思いますが、このように、医学的には低用量ピル服用中、毎月月経が来る必要ありません。ちなみに連続投与の安全性や、ピル服用後の月経再開、妊孕性は通常の使用方法と同じですし、むしろ連続投与の方が月経量改善、月経痛改善に効果が高いという研究結果も出始めています。
一般の方も含めた調査で割り出された試算ですが、わが国では月経随伴症状のために1年間で約7000億円!!もの経済損失があるとのことです。これは月経痛などの症状により欠勤を余儀なくされたり、仕事のパフォーマンスが下がったりすることが原因でしょう。また女性の社会進出、特に昇進への影響は明らかになっています。これはもちろん中高生も同様で、海外のデータになりますが月経困難症のある9-18才の方の調査では、月経困難の無い方に比べ欠席する割合が約4倍になるという研究結果が出ました。海外では高校生にも生理休暇をとの動きもあるようですが、日本はまだまだですね。休むにしても、特に担任が男性であると言いにくいということもあるでしょう。また部活の顧問が女性なのに理解がなく、やる気が無いと判断されレギュラーを外されたなんてこともありました。お母さんはじめ女性の方が厳しいかもしれません。頭ごなしに我慢しなさいとか、怠けてるとか言わないで、どうか理解してあげるためにも一度医療機関を受診させてください。いずれにしても学業・部活等に支障を来すことはもとより、欠席日数が増えることで受験の際の内申点に影響が出るのではという心配も生じます。

月経困難で受験勉強に集中できないことを避けるため低用量ピルを開始したところ、生理痛で学校を休むことが無くなり、さらに受験日当日に月経があたるのを避けるため月経移動ピルで対応し受験に成功できたとか、同様に部活の練習・大会でのパフォーマンスが維持できたなどと喜んでいただくことはしばしばです。

方法は山ほどあります。ありますが、患者さんに合わせてオーダーメイド的に対処しないとうまくいきません。まずは良く分かっている医師のいる医療機関を受診してくれるといいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.02更新

今日は思春期から低用量ピルを始めるにあたり、皆様からご質問が多い点についてお話しましょう。

まず、一般的に想定されている初期の副作用として、嘔気、嘔吐、頭痛、不正出血などがあります。生活に支障を来すほどの症状がありましたら、ピルの種類を変えるなどお話を伺いながら対処して参りますので遠慮なくご相談下さい。ただしこのような飲み始めの不都合は、飲み始め2~3カ月もしますと無くなってくることが多いですので、可能なら頑張って頂くと良いと思います。また長期服用すると血液の凝固能が高まる可能性があることも重要な副作用として挙げられます。詳しくは以前のコラムでお話しましたのでそちらも参考にしていただきたいですが、低用量ピルの長期服用で血栓症を発症する確率は0.05%程度、さらに当院では定期的な血液検査で確認しながら安全にお使いいただいておりますのでご安心を。ただ残念ながら、今はネット等で出所不明のピルを個人で入手し、医師のチェックなしで使っている方もおられるようです。ご自身の健康のためにも定期的に血液検査をしながら、医師の管理の元使って頂くことが重要です。一度失った健康を取り戻すのは容易なことではない場合が多いですから。
その上で思春期のお子さんにお使い頂く際、心配される方が多いのは骨形成に対する影響です。2023/11/10のこのコラム、更年期のところで詳しく説明しましたが、女性ホルモンであるエストロゲンには骨の新陳代謝を調整する働きがあります。ですから骨が盛んに形成される時期にはピルを含むエストロゲン製剤は使いづらいわけですが、初経後には成長期の骨成長が終了していると考えられるため骨形成に関しての心配はありません。前回紹介した、「初経後3カ月が経過すれば安全に使用できる」というWHO(世界保健機構)等の見解はそのような意味でもあります。むしろ骨形成には適切な量の運動が不可欠なので、月経痛等で動かなくなることが骨の成長に良い影響を与えないということは十分に考えられることです。
またピルは避妊でお使い頂く方が多いお薬ですので、ピルで妊娠できなくなることを心配される方がものすごく多いです。もちろんピルには高い避妊効果がありますが、妊娠をご希望される時期になったら服用を休止することで必ず妊娠する力は戻りますのでこちらもご安心を。むしろ、これまで何度も述べましたが、ピルは妊娠する力を維持するためにも早くからの使用して頂きたいお薬です。
さらに都市伝説的に「ピルは太る」というのがあるようですが、完全な都市伝説です。ただしピルによっては「むくみ」が出る場合があります。その場合はピルの種類を変更すれば改善しますし、むしろむくみの改善にピルを処方することもあるくらいです。またニキビが多くなってしまう方もおられますがこちらも同様です。ニキビの改善に有効なピルがあります。

このように、基本的にはピルは大変に安全なお薬ではありますが、数あるピルの中で適切なピルを選択していくことが大切です。良いお薬ですので、専門知識と多様な患者さんへの処方経験を持つ専門医の管理の元、適切かつ安全に使用して頂きたいです。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.01.26更新

ここ数回にわたり月経困難症について触れてきました。特に前回は子宮内膜症による月経困難症につき、将来的な妊孕性(妊娠できる力)確保のためにも早期の診断・治療が必要と述べました。この子宮内膜症による月経困難症治療を、早期(思春期でも)から始めることの重要性を理解して頂きたいというのが、実はこの月経困難症のシリーズを始めた最大の動機です。

もちろんこの思春期の時期は月経そのものがまだ安定していません。体と心が急激に変化していく時期でもあります。生理痛の現れ方も様々ですし、生理痛だけでなく、腰痛、むくみ、ニキビ、食欲不振、下痢、吐き気など、この時期には体の変化が突然かつ次々と起こってきます。こうした体の変化に加え、体の変化に気持ちがついて行けず学業や部活動、友人関係などに影響を与える、ということは調査結果から明らかになっています。また、こうした変化に対する戸惑いをほとんどの方が誰にも相談できず我慢してしまい、さらに悪化させてしまっているということも分かっているため、様々な不安を軽減するためにもまずは受診していただき診断をつけることが大切です。産婦人科の受診についてはハードルがとても高いことは容易に理解できますが、前回も触れましたが内診等苦痛を伴う診察は行いませんので、まずは親御さんに連れてきて頂くことでそのハードルを取っ払えればと思っています。またこの時期から産婦人科医師をかかりつけ医として持っておくことは、将来的な健康において非常に大切です。お子さんが安心して受診できるよう親御さんのサポートをお願いいたします。これまで周期的に来ていた生理が来なくなった、生理痛・強い吐き気や頭痛などで生理中は学校を休みがちになったなどの場合は受診させてください。
治療は鎮痛剤、鍼灸、漢方薬、サプリメントなど含め、患者さんに合わせてあらゆる角度から様々に行っています。ただ子宮内膜症が疑われた場合は、現在困っている生理痛だけではなく、将来的に起こってくる可能性のある様々な不都合に対処しておく意味でも、やはり低用量ピルが良いでしょう。また生理不順は鎮痛剤では改善できないため、この場合も低用量ピルの適応となります。
ピルの基本的なお話につきましては、以前のこのコラムで触れておきましたので参考にしていただくとして、そもそも「こんなに小さい子にピル?!」というご心配もごもっともです。結論から申しますと、使用しても問題なく体への影響は心配ありません。思春期の生理痛・生理不順には、低用量ピルが「初経後3カ月が経過すれば安全に使用できる」というのがWHO(世界保健機構)はじめ各学会等の見解です。とはいえ、ご心配は尽きないと存じますので、次回は思春期の女の子の低用量ピル服用に対して皆さんが不安に思っておられるであろうことについてお話します。

まだ生理が始まったばかりの思春期の方にとって、生理中の不都合はただ痛いなどだけではなく大きな不安を伴うものでもあるのです。繰り返しますがお子さんが早いうちから産婦人科にかかることが出来るよう、親御さんはじめお子さんが信頼できる大人にサポートして頂けることを願っています。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.01.19更新

厳しい寒さが続きます。
被災地の方の健康を祈らずにはおられません。

前回子宮内膜症のあらかたの成り立ちなどについてお話しました。痛みだけではなく、将来を見据えた対応が必要ですと。
今回は思春期の月経困難症についてです。
子宮内膜症は20代後半から発症することが多いと言われていますが、前回述べましたとおり、これは痛み止めが効かなくなって初めて受診して診断される方が多いためかもしれません。しかし鎮痛剤は痛みを軽減するだけで内膜症の原因を治療するものではありませんので、痛み止めが効いている間にも内膜症は進行しお腹の中の癒着が形成されていってしまうかもしれないことも前回お話しました。ですから20代後半まで生理中の痛みを鎮痛薬だけで対処していると、気づかないうちに子宮内膜症が進行しお腹の中の癒着が進んでしまう可能性があるということです。この癒着が卵巣まで及びますと月経痛だけではなく排卵痛が強くなってきます。また卵管にまで及びますと卵管狭窄、卵管閉塞などを引き起こしてしまいます。卵管がつまれば排卵された卵胞を取り込めませんから、将来不妊につながる可能性も指摘されています。つまり将来妊娠できる力をキープするためにも早めに適切な対応することが必要だということです。ましてや近年の傾向として、出産する年齢が高くなってきています。30歳代になるまでに妊娠をしない方も多いです。妊娠を望んだ時に妊娠できる力をキープするということを考えて、症状がある場合は早いうちから速やかに治療を開始することが大切です。早いうちというのは10代、場合によっては小学生も含みます。月経痛が毎月しんどい、だんだんと辛くなったきた、痛み止めが効きづらくなってきた、効かなくなってきた、またそれに伴って登校が遅れる、休みがちになるなどして授業に支障が出てきたなどが受診のタイミングかと。もちろん思春期の患者さんに内診等行うことはありませんので安心して受診して頂き診断を受けてください。

治療は低用量経口避妊薬(LEP)を中心としたホルモン療法が良いでしょう。低用量経口避妊薬を使うことで子宮内膜症の進行を抑え将来妊娠しやすい体を保つことができるからです。結論から言いますと思春期の女性への低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤)投与には問題はありませんが、ご心配も最もですので、次回はその辺にについて少し詳しくお話しましょう。当院では数多くの小中学生や高校生が低用量ピルで生理痛から解放され喜んで頂いています。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.01.12更新

本日は子宮内膜症について。
子宮内膜症の「子宮内膜」とは子宮の真ん中にある膜です。膜というくらいですから元々はとても薄いのですが、月経周期に伴ってだんだんと厚くフカフカになります。厚くなるのは受精卵を着床させやすくするためで、もし受精卵が来なければ厚くなった内膜は剥がされ元の薄い膜に戻ります。この厚くなっていた分の内膜が排出される現象が月経です。子宮内膜を含む血液が子宮口から出るのが月経血ですが、一部お腹の中に出てしまうことがあります。どうしてお腹の中に出てしまうかは未だ全て明らかにはなっていませんが、卵管から逆流してしまうことなどが考えられています。お腹の中に出てしまうと子宮壁、卵巣、卵管、腹膜、その他の臓器にくっついて増殖し、腹腔内の癒着、炎症を引き起こし痛みの原因となります。これが子宮内膜症です。手術でお腹の中を見てみると、むしろ子宮内膜がお腹の中に全く見られない方のほうが稀で、全ての女性は子宮内膜症ではないかと思うほどです。では子宮内膜症としての症状が全くない方と強く出る方がいるのは何故でしょう。通常、お腹の中にあるべきではない組織がお腹の中に出現すると免疫の力が排除してくれるはずですから、そういった免疫の差が関係しているのではないかという説もありますが、これもまだ良く分かってはいないのです。
子宮内膜症が発症する場所は様々です。横隔膜や腸管内、なんと肺から内膜症の組織が見つかったこともありますので本当に様々ですが、多いのはやはり子宮壁、卵巣、卵管です。ですから、やはり生理痛がひどくなり日常生活に支障が出てきたという段階で受診され、子宮内膜症ですね、と診断される方が圧倒的に多いわけです。患者さんにしてみれば、市販の痛み止めで何とかなってるから病院にかかるほどではないと考えるのは無理もありませんが、痛み止めは痛みを取っているだけで、上で述べた子宮内膜症の根本原因に対処しているわけではありません。つまり痛みが取れて治ったと思っている間にも内膜症が進行している可能性があるということです。以前にも述べましたが、厚生労働省の調査によると、月経困難症の患者数は推定800万人以上とされていますが治療を受けている人はその10%程度にすぎません。また海外のデータではありますが、機能性月経困難症と診断された患者さんの実に約70%が子宮内膜症を発症していることもわかっています。早めの受診が望まれます。

来週はこの続きを。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.12.22更新

「月経困難症の原因②子宮腺筋症〜女性が知っておきたい疾患〜」

このところ月経困難症についてお話させていただいています。いわゆる生理痛のことですが、生理のたびに強い痛みなど生活に支障が出るほどになったら月経困難症ですね、ということは以前に述べました。この月経困難症の原因として、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などがあり前回の子宮筋腫に続いて、今回は子宮腺筋症について述べます。

子宮腺筋症は一言でいえば「子宮の筋肉が厚くなる」疾患です。子宮筋腫は子宮の筋層に筋肉の瘤(こぶ)が出来ますが、子宮腺筋症は子宮の筋肉そのものの全体または一部が厚くなる状態です。子宮筋腫と同様に良性の腫瘍でがんではありませんが、女性ホルモンによって大きくなりますので少なくとも月経のある間は子宮筋層が厚くなり、結果として子宮全体が大きくなる可能性が高いです。原因としては、子宮内膜のような組織が子宮筋層に発生し、そこに女性ホルモンが作用し病変部位およびその周囲の子宮筋層が肥厚する、などが考えられています。この子宮腺筋症病変による子宮内膜の拡張・変形、子宮筋の線維化による子宮収縮のアンバランス化などで、子宮収縮が異常に亢進し、月経過多、不正出血、月経困難などの症状が引き起こされることが想定されています。
治療法も子宮筋腫とほぼ同様です。前回のコラムを見てみて下さい。
薬物療法について追加を2つ。
まずGnRH アゴニストです。GnRHとは卵巣から出される女性ホルモンを調整するために脳から出ているホルモンです。このGnRHを抑えることで女性ホルモンを抑えるということです。子宮腫大に対する縮小作用は最も有効とされますが、抗エストロゲン作用の副作用としての骨量減少の懸念から、最長6カ月間という投与制限があります。当院ではレルミナを採用しており、皆さんに大変喜んで頂いています。
次にLNG-IUSです。これは主に排卵後に分泌されるプロゲステロンというホルモンを付加したT字型の子宮腔内装着器具です。一度装着すると、毎日平均20㎍のプロゲステロンを子宮腔内に5 年間放出し、子宮内膜を萎縮・菲薄化させることで、過多月経・月経痛・慢性疼痛・子宮腫大のいずれにも有意な改善が示されています。ですので定期的にチェックはしなければいけませんが、一度入れたら不都合無い限り5年間入れたままです。ネットには装着時痛みを伴うといったことが載っているようでドキドキしながら来院される方もいらっしゃいますが、私が実施した方に痛みを強く訴える方はいませんし、その後は入ってることも意識することなく過ごす方がほとんどです。ただ大きな子宮筋腫があると装着できないことがあります。当院ではミレーナを採用しています。

次回は子宮内膜症についてお話します。
本年のコラムは今回で最後です。また来年。
どうぞ良いお年をお過ごしください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

 

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.12.15更新

今日は月経困難症の原因の一つ、子宮筋腫について
子宮筋腫は、子宮の壁に出来る腫瘤(こぶ)のことです。30歳以上の日本人女性の20-30%にみられますので、決して珍しい疾患ではありません。良性の腫瘍でがんではありませんが、女性ホルモンによって大きくなりますので、メカニズム上は少なくとも月経のある間は大きくなる可能性が高いです。また多発性と言っていくつもできることがしばしばで、数や大きさやできる場所によって症状が違ってきます。
症状としては月経量が多くなることと月経痛、つまり月経困難症です。その他に月経以外の出血、腰痛、頻尿(トイレが近い)などがあります。一般に子宮の内側にできた筋腫は小さくても症状が強く月経量が多くなります。逆に子宮の外側にできた筋腫は大きくなっても症状がでない傾向があります。そのため治療必要かどうかも、できた場所や症状によって異なってきます。不妊、習慣流産などの原因となることもあります。
まずは超音波検査で診断しますので、気になる方はチェックを受けると良いでしょう。また市の子宮がん検診等で偶然見つかることもあります。
治療法には手術と薬があります。手術は子宮全摘術(子宮ごと取る)と筋腫核出術(筋腫だけ取る)があります。方法は開腹と腹腔鏡補助下手術があります。もちろん筋腫が小さく症状の無い場合は治療の必要はありませんが、一般に筋腫径が8cmを超えると腹腔鏡下の手術は困難になります。何の症状もなく知らないうちに大きくなってしまい、もはや開腹手術しか選択肢が残されていないなんてことにならないように定期的なチェックで大きさを把握しながらタイミングを逃さないようにしてあげたいと思っています。
子宮筋腫を根本的に治す薬は今のところありません。でも筋腫は女性ホルモンで大きくなりますからこのホルモンを抑えてあげればいいわけです。でも女性ホルモンが少なくなるということは、いわゆる閉経の状態にするということで偽閉経療法と呼ばれます。この療法で子宮筋腫を小さくしたり、出血や疼痛などの症状つまり月経困難症を軽くすることができます。もちろん女性ホルモンの分泌が少なくなるので更年期様の症状がでたり、骨量が減少するおそれがあるため長期(半年以上)の治療できません。ですから薬による治療は、手術前の一時的な使用や、閉経が近い年齢の方などの一時的治療、逃げ込み療法などと呼ばれます。

次回は子宮腺筋症について。
そろそろ年も押し迫ってまいりました。どうぞ生活のリズムが乱れることのないようご自愛ください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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