ドクターコラム

2024.04.05更新

新年度が始まりました。新しい生活・環境を希望に満ちてスタートされている方も多いと思います。

今日はこのところお問い合わせが多い人工妊娠中絶薬(経口中絶薬)について。
2023年4月、いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」が承認され1年になりました。薬で中絶出来るということは、「病院に行かなくてもいい」「手術しなくていい」「親にバレない」等々、良いことばかりでお気軽に中絶できるとお考えになる方がいらっしゃるようです。もちろんこれまではほぼ手術という選択肢しかなかったので、選択肢が増えるという点では喜ばしいことであることは間違いありません。手術はいずれの方法でも子宮内に器具を入れるために、子宮の内壁を傷つける等リスクがあります。当院では安全な吸引法を採用していますのでまず心配はありませんが、経口中絶薬は子宮に器具を入れることがないので、子宮にも精神的にも負担が少ない中絶法と考えられています。
経口中絶薬「メフィーゴパック」は2種類の薬がパックになっておりそれらを順番に服用します。ます初めに「ミフェプリストン」を内服します。「ミフェプリストンは」妊娠を継続するホルモン(黄体ホルモン)の働きを抑えます。ミフェプリストン内服後36時間から48時間後に第2薬の「ミソプロストール」を服用します。「ミソプロストール」は、子宮を収縮させ内容物を排出させます。この薬は収縮が強くなりすぎることがあるため、ゆっくり吸収させる必要があるため、すぐにのみ込まず左右の奥歯の頬と歯茎の間に入れて30分間かけて口の中で溶かします。
中絶薬は、人工妊娠中絶手術に比べて負担が少なく、入手方法も比較的簡単に見えるため、使用したいと思われる方が多いかもしれませんが、注意も必要です。
まず経口中絶薬の失敗率はおよそ8%で、人工妊娠中絶手術よりも高率です。その上で子宮内の妊娠であることが必須です。妊娠反応陽性だけで使用し子宮外妊娠だった場合、卵管破裂等を引き起こすと命に関わります。ですから必ず医療機関を受診し超音波で子宮内の妊娠であることを確認することが重要です。「病院に行かなくてもいい」は間違いです。また中絶薬は大量出血といったリスクもあります。自己判断で中絶薬を服用し大量出血を来し救急搬送されたとしても適切な処置をスムーズに受けられない可能性もあります。
そのため、現状では経口中絶薬を処方するには2つの条件があります。「母体保護法指定医」であることと、「入院可能な医療機関」であることです。母体保護法指定医とは産婦人科専門医の中から母体保護法に基づいて指定される医師です。また出血などの症状に対応するため、中絶が確認されるまでは院内で待機することが必要とされています。当院はすべての医師が母体保護法指定医であり入院施設も完備していますのでこの中絶薬を処方することは可能なのですが、現状、申し訳ありませんが当院では取り扱いをしておりません。それには様々理由があるのですがそれはまたの機会に。

手軽に使用できると思われがちな中絶薬ですが、このように様々注意が必要です。妊娠したかもしれないと思ったらまずは婦人科を受診しましょう。メフィーゴパックは登録された指定医師の管理の下で使用できる薬剤であり、薬局やインターネットでの購入はできません。しかし海外の経口中絶薬の使用が認められている国ではインターネット上で販売していることもあるようで、こうしたサイトより個人で輸入、使用し、大量出血を来し危険な状況に陥った症例もありました。くれぐれも個人輸入等イレギュラーな方法で入手することなく、くりかえしますが妊娠したかもしれないと思ったらまずは婦人科を受診、相談にいらしてください。
根本産婦人科医院 院長  根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.03.29更新

少し暖かくなってきましたね。季節の変わり目です。体調には十分気をつけて下さい。

今日は再び、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)について。
HPVワクチンは小学校6年生から高校1年生相当の女子を対象とした定期接種のワクチンです。
ただ、ワクチンの積極的勧奨が無かった時期があり、この時期に接種を受けられなかった1997年度生まれ~2007年度生まれ(1997年4月2日生まれ~2008年4月1日生まれ)のキャッチアップ世代の方にも早く接種を受けて頂きたい思いから、2023/07/07のコラム、
「急報! 16才-26才のキャッチアップ世代の方 子宮頸がんワクチンを受けて下さい!!」
で触れましたので詳しくはそちらで。
当院にも、定期接種の方、キャッチアップ世代の方、多くの方に、このワクチンの接種にお越しいただくようになってきてはいます。また接種そのものは産婦人科以外の施設(内科・小児科など)でも可能ですので、いずれの施設でも構いませんから早く受けて頂きたいです。ただ産婦人科以外の診療科の先生方はもちろんご専門ではないので、他院で受けようと思ったけどもう少し詳しい説明をと当院にいらっしゃる方が少なくありません。ので、そういった方々から良く頂くご質問にお答えしておきたいと思います。
まずキャッチアップ世代の方への接種の仕組みの確認です。この世代の方への公費での接種は2025年4月まで、よって残された時間はあと一年となります。でも、まだ一年あると思わないで下さい。このワクチンは3回接種が基本です。3回接種の標準的なスケジュールでは完遂までに6カ月かかります。ので、接種を公費で完了するには「本年の9月までに一回目を終えないと間に合わない!」のです。ちなみに公費接種が終了しても自費でお受けいただくことはもちろん可能ですが、自費ですと10万円くらいかかってしまいますから、しつこくもう一度お知らせさせて頂いている次第です。
次にワクチンの種類です。現在公費で接種可能なHPVワクチンは2価、4価、9価の3種類があります。HPVというウイルスには非常にたくさんの種類があり番号が付けられています。このうち子宮頸がんに関与するウイルスは、高リスク型である16番、18番、31番、33番、45番、52番、58番の7種類が知られています。この7種類に低リスク型(尖圭コンジローマなどの原因となる)である6番、11番を加え9種類のウイルスをすべてカバーしようというのが9価ワクチンというわけです。より広いHPV型に対する予防が期待できるわけです。またワクチンの種類による副反応の出方には差が無いことが分かっています。ですから9価は2価より副反応が強いということもありません。このような理由から当院では9価ワクチンを推奨しています。
またこの副反応についても良くご質問頂きます。積極的な勧奨が再開しそろそろ1年になり被接種者総数は増加しておりますが、副反応疑いの報告の割合は変わらず、低いまま推移しています。ちなみに当院では疑いも含め1例もありません。

この子宮頸がんワクチン、まだまだ進んでいません。先進国では80%に及ぶ高い接種率を達成していますが、日本はまだ25%程度‼️です。7/7のコラムでもお願いし繰り返しになりますが、定期接種世代・キャッチアップ世代の方、娘さんをお持ちのお母さん、知り合いのいる方、ぜひ勧めてあげて下さい。もうすでに接種した方もお友達に勧めてあげて下さい。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.03.22更新

前回に引き続き、妊活前の準備、プレコンセプション(preconception)についてもう少し、特にウイルス感染症についてお話しましょう。

妊娠中にお母さんがかかると赤ちゃんに影響のある感染症として、まず風疹が知られていますね。風疹は風疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。特徴的な発疹・発熱・リンパ節の腫大といった症状がありますが、3日程度で消えるため軽いはしかという意味合いで三日ばしかなどと呼ばれます。症状は軽いので罹患したことに気がつかないこともあるくらいですが、妊娠初期20週までにお母さんがかかると赤ちゃんに難聴や心奇形、白内障などの先天性風疹症候群が起こる場合があります。このため妊娠初期の検査で必ず調べますが、この初期の検査で風疹の抗体が少ないことが分かったところで、風疹ワクチンは生ワクチンですので妊娠中に使用することはできません。よって妊娠前に風疹の抗体価を調べ、少ない場合は妊娠する前にワクチンを接種し抗体を増やしておくことが大切になります。ワクチン接種後は2カ月は妊娠しないようにしてください。でも、もし妊娠していると知らずにワクチンを接種したとしても、それを理由に妊娠を中断する必要はないとされているので、「妊娠していると知らずにワクチンを接種してしまった」という人も、まずは医師にご相談ください。また同居の方も抗体を持っていることが重要ですので、家族で抗体検査を受け抗体が少ない場合はワクチン接種を受けておきましょう。抗体検査、ワクチン接種についてはご本人のみならず、パートナーの検査や接種の助成をしている自治体もありますのでご確認下さい(市川市はご本人とパートナーにも助成があるようです)。
https://www.city.ichikawa.lg.jp/pub10/1111000113.html

次にはしか(麻疹)です。このコラムにタイムリーにと言いますか、このところ流行してきて要注意です。麻疹というと子供の病気と思われがちですが、感染力が強いため大人も、とくに妊婦さんが感染すると流産や早産を引き起こすことがあるので注意が必要です。はしかは、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。麻疹を発症すると、まず38℃前後の発熱が2〜4日続き、同時に咳や鼻水、喉の痛み、結膜炎のような症状、頬の裏側あたりに小さな白い斑点(コプリック斑といいます)が現れます。熱はいったん下がりますが、半日程度後、今度は39℃以上に熱が上がります。さらに耳の後ろや首などに発疹が現れ、それが全身へと広がっていきます。このように風疹に比べ症状は激烈ですが、風疹などとは違い、麻疹が原因でお腹の赤ちゃんに先天的な病気や障害引き起こすことはほとんどありません。ただし妊娠中の女性が麻疹に感染すると、流早産、低出生体重児の可能性が高まるといわれていますので、妊娠や出産の際に注意すべき感染症といえます。また風疹と同じく妊娠中は麻疹ワクチンの接種ができませんので、妊娠前のチェック、接種が望まれます。

その他、様々あるので、全てを網羅するブライダルチェックを受けて頂くのもいいでしょう。
いずれにしましても、「妊娠してからケアしても遅いということが少なからずある」ことがお分かりいただければ幸いです。日本の周産期死亡率や新生児の合併症の低さは世界でもトップレベルにありますが、我々にはまだまだ出来ることがあると思っています。また全体の確率がいかにトップレベルでも、ご自身の身にあるいはお子さんの身に何か起きてしまえば、ということがあります。出来ることはすべてやっておくという意味でも、是非このプレコンセプションの重要さをご理解下さい。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.03.15更新

今日はプレコンセプション(preconception)について。
コンセプトとは概念・考えという意味が主ですが、そこに受胎という意味があるというのが面白いですね。ですからプレ・コンセプションとは受胎前、つまり「妊娠の準備をすること」という意味になります。女性やカップルが現在の生活や健康に向き合う中で将来の妊娠に備えるという、まさに概念です(笑)。
まず、これまでかかった病気がある方や現在飲んでいる薬がある方は、将来の妊娠に影響がないか妊娠したらどう管理していくかなど、妊娠前から主治医と良く相談して妊娠に備えて頂きます。そして妊娠してからも産科医が主治医と連携することで安全に妊娠を維持することに注力します。
その上で健康な方も含め、妊娠前から注意して頂きたいことがあります。
例えば赤ちゃんの体が形作られるときにお母さんの血糖が高いと、赤ちゃんに先天性の異常が生じる可能性が高まったり、早産、胎盤機能異常のリスクも高まります。ですので妊娠前に血糖値を調べ、高い場合は妊娠前から血糖を適正にコントロールしておくことが大切になります。
適切な体重管理も重要です。肥満体型の妊婦さんには早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、血栓のリスクが高まることが分かっています。妊娠前に減量し適切な体重にしておくことでこれらのリスクが軽減されます。また痩せすぎも問題です。妊娠前にお母さんが痩せすぎているほど赤ちゃんの出生体重が小さくなることが分かっているばかりではなく、小さく生まれた子は将来、糖尿病や高血圧といったメタボリックシンドロームになりやすいことも分かっています。
喫煙の弊害は言うまでもありませんが、妊娠中の喫煙は、受動喫煙含め、早産、低出生体重児、常位胎盤早期剥離の合併症を有意に増加させますが、妊娠中の禁煙成功率は20%と極めて低いので、「赤ちゃんできたらやめます」はほぼ不可能です。妊娠前からのご家族含めた禁煙が望まれます。
そして妊娠前から摂取して頂きたい栄養に葉酸があります。葉酸はDNA(細胞が分裂・増殖する時に必要)を合成するための重要な栄養素ですので、葉酸が不足すると赤ちゃんに神経管閉鎖障害などの先天異常が起きる可能性が高まります。妊娠前から葉酸を摂取することでそういった先天異常が有意に低下することが分かっています。葉酸は緑黄色野菜、豆類、果物、レバーなどに多く含まれる栄養素ですし、効率的に摂れるサプリメントもありますのでご相談下さい。

以上、本日はプレコンセプションについてお話しました。こわい話ばかりで申し訳ない限りですが、もう少しありますので次回触れたいと思います。当院では、男性用、女性用のプレコンセプション・チェックシートなども用意し、まずはご自身の妊娠、出産、子育ての経験の上に豊富な臨床経験を積んだ優秀な助産師、看護師がいつでも相談に乗れる体制を整えておりますので、一度ご相談にいらしていただくのもいいでしょう。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.03.08更新

今日は子宮頸がん検診のお話をします。
結果が届いても患者さんの中には理解しづらいとの師長のリクエストです。

子宮頸がんは、HPVワクチンのコラムでお話しましたが、日本ではまだ年間10000人がかかり3000人が亡くなっている癌です。子宮癌検診は子宮頸がん罹患率を減少させる膨大なかつ確実な証拠がある検査です。市町村によって多少の違いはあるみたいですが、基本的には20代以降の年齢の方に公費で行えるようになっています。市から案内が来たら、ワクチン接種後の方も含め必ず来院してください。

一般的に子宮頸がん検診は、問診、腟鏡診(子宮頸部の観察)と細胞診(子宮頸部の細胞をブラシなどで採取し顕微鏡で調べる)で行われます。当院ではご希望があった場合や医師が必要と判断した場合に、超音波検査を加え検査の確度を上げるようにしています。また症状のある方などには内診(子宮や卵巣の触診)を行い症状の部位を特定するという診察も行っています。子宮癌検診で子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣嚢腫等々の他の病変が超音波検査で、見つかることもあります。また近年、別の検診方法として自分で採取する自己採取細胞診検査があるようですが、この方法は国立がん研究センターにて「精度が悪く受けるべきではない」とされています。必ず医師による検診を受けて下さい。
市の子宮頸がん検診の結果は当院検査後3-4週間後郵送で届き、「精密検査不要(異常なし)」と「要精密検査(異常あり)」のいずれかのみが記載されています。「精密検査不要(異常なし)」の方は、以後何もなければ次回の案内まで検査は不要です。「要精密検査(異常あり)」の場合は速やかに、必ず、精密検査を受けに来てください。要精密検査の方で、それががんである確率は約1%ですのであまり心配せず。ただ、がんでないにしても、それが将来がんになりかねない前がん病変であったりした場合、がんになる前に治療し、大事に至らないようにすることも出来るわけです。ですから、「がんだと言われたらどうしよう」とか、逆に「1%なら大丈夫だろう」などと先延ばしにせず、すみやかに精密検査を受けましょう。
来院頂きましたら、結果につきもちろん詳しくお話します。結果は、悪性と良性の区別がつかない「ASC-US」から扁平上皮がん「SCC」等までになります。結果次第で、例えば、「ASC-US」はがんへと進む前に異形が自然に消退するケースも少なくありませんが定期的に診ていきましょうね、とかお話します。精密検査はHPV検査、コルポスコピー検査(拡大鏡で子宮頸部を観察する検査)、生検(組織の一部を採取)などになります。

あまり受けたくない検査であることは十分に承知しています。きわめて短時間で済むように工夫しておりますし、苦痛やリスクはありませんので定期的に受けるようにしてください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.03.01更新

思春期は、将来、妊娠・出産ができる体をつくる時期というだけではなく、一生を通した体作りに大切な時期です。女性ホルモン、エストロゲンには丸みを帯びた女性らしい身体作り、頭髪や皮膚に潤いを与える等、健康的な身体を作る役割があります。思春期に女性の顔や体がふっくらと丸みを帯びてくるのは、将来の妊娠・出産にそなえての準備であり、けっして肥満なわけではなく正常な変化です。この女性の身体にとって大変に大事な時期である思春期に、不適切なダイエットや食事が偏ったりしますと当然様々な支障が出てきます。

前回、急激な体重減少により生理が止まってしまうのは、ある意味、身体のシステムが引き起こす防御反応のようなものですというお話をしました。そのメカニズムの一つが女性ホルモンの減少です。女性ホルモン(主にエストロゲン)は、生理をうまく回したり、妊娠する条件を整えたりするだけではなく、骨形成およびコレステロールを分解する働きを持つことは以前このコラムで述べました。
骨形成については骨粗しょう症のところで触れました。骨も皮膚や髪と同じように新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨は壊され、新しい骨が補われています。この古くなった骨を壊す細胞を破骨細胞といい、新しい骨をつくる細胞を骨芽細胞といいますが、この破骨細胞が骨を壊すスピードと、骨芽細胞が骨をつくるスピードの絶妙なバランスで骨量が安定し強さが保たれているのです。一方、エストロゲンには破骨細胞の働きを適度に抑制する働きがあります。つまりエストロゲンが少なくなると、骨を壊すスピードが抑制されず壊され過ぎてしまうため骨量が減ってスカスカになってしまうわけです。一方この思春期の時期は、生涯で唯一「骨密度が増える時期」です。そのため、この時期に極端なダイエットをして栄養素が不足した状態が続くと、骨密度が充分に増えることなく生涯を過ごすことになります。骨密度が低いまま高齢期にさしかかると骨粗しょう症になる可能性が高まります。
コレステロールについては更年期のところでお話させて頂きましたが、エストロゲンは肝臓での、特に悪玉コレステロールの代謝を促進する働きをしています。つまりエストロゲンが少なくなるということは、コレステロールが分解されず高コレステロール血症になりやすくなる、つまり将来高コレステロール血症による脳卒中、心筋梗塞等のリスクが高まるということです。

以上、思春期に急激なダイエットをしてほしくない主な理由を挙げさせて頂きました。生涯にわたる健康な体作りが必要な大事なこの時期は、精神的にも揺れ動く難しい時期でもありますね。親御さんとして対応ご苦労されることも多いかと存じます。以前も宣伝しましたが、当院には自身の子育て体験も含め、経験豊富で優秀な女性スタッフがたくさんおります。経験だけではなくものすごく良く勉強しています。最初から医師に相談はハードルが高いという方は、まずはスタッフがお話を聞きますので遠慮なくお越しください。

三寒四温、天候が不順になる時期です。お身体ご自愛ください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.23更新

本日はダイエット、特に思春期のダイエットについてお話しさせてください。最近になって生理が急に来なくなったと来院される中高生の中で、よくよく聞くと急激な体重減少があり、ご本人が無理なダイエットをしていたというケースがまた増えてきているようです。

イタリアでやせ過ぎのモデルはファッションショーに出演できなくなったことなどに象徴されますように、不適切なダイエットは多くの先進国で社会問題になっています。にも関わらず日本の若い女性は「やせすぎ」の傾向にあります。テレビや雑誌、SNSなどの影響を受けてのことであろうと思いますが、若い女性、とりわけ、成長期である思春期の女性が過剰なダイエットをするのは実はとても危険なことのです。
そもそも充分な栄養を摂取しないということが続くと体は低栄養の状態になります。体がこの低栄養状態に長期間晒されますと、体内では様々な機能低下が起こります。貧血・低血圧・不眠・免疫力低下といった症状に加え、精神的にも疲れやすい・無気力・注意散漫などの障害が現れることがあります。
そして無月経です。実は人間の体の中身は原始時代からほとんど変わっていないそうです。原始時代で急激に体重が減少するということは食べるものがないことを意味します。自分が食べるものがないのに妊娠してしまいますと子供を育てられません。ですから妊娠しないようにホルモンが動きその結果生理が来なくなるわけです。ですから急激な体重の減少に続く無月経という現象は、妊娠しないように体のシステムが引き起こしているということも考えられています。人間の体は機械ではありませんから、一度失ったバランスを取り戻すのは容易でない場合があります。ですから思春期の過剰なダイエットは、無月経の一因となり、ひいては将来の妊娠に悪影響を及ぼす可能性があります。仮に妊娠したとしても、子どもが低出生体重になる可能性があります。低栄養なのですから当たり前ですが、実際、日本では若い女性のやせすぎとともに、低出生体重児の増加が問題視されています。この低出生体重児、他の先進諸国では社会が豊かになるにつれ減少しているという事実からしましても、これは日本特有の現象と言えます。さらに低出生体重児は、将来の生活習慣病のリスクが高くなる可能性も示唆されています。無謀なダイエットは将来の自分のお子さんの病気を引きおこす可能性があることも知っておいてください。

また、これまで何度もお話していますが、女性ホルモンは月経・妊娠・出産に重要な役割を果たすことは言うまでもありませんが、それだけではなく女性の健康そのものに重要な役割を果たしています。
次回はこの点についてお話したいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.16更新

冬本番の寒さも一休みといったところでしょうか。少し過ごし易い気候が続いてますね。
本日は低用量ピルの連続投与について。

これまでの「21日間内服後7日間休薬またはプラセボを内服して頂き、消退出血を起こしてからまた次のシートへ」という飲み方を周期投与といいますが、それに対して休薬期間を設けずにずっと飲んで頂く方法が連続投与です。連続的に内服するということは休薬期間が無いので、多くの方が消退出血(月経)が起きなくなります。月経が無いことで、月経痛や過多月経による貧血、PNSなど月経にまつわる不都合もなくなるとことが期待できるので、周期投与で改善が今一つだった方々からまずはお勧めしてきました。この連続投与については、何回かこのコラムで軽く触れては詳しくは又の機会にと後回しにしていましたが、「月経が毎月無くていいの?」というご心配も当然で、そういうお声がチラホラと聞こえてきまして遅まきながら今回ガッチリやりたいと思います。ガッチリと言いましても、結論は「現在すぐの妊娠を望んでいないのであれば、毎月の月経は必要ない」が医学的に正しい言い方になります。そもそも昔の日本人女性は平均約5回の妊娠出産を経験していました。妊娠期間中、授乳期間中は月経が無いので、その分現代の女性に比べ月経回数が少なく、さらに昔の女性は初経が遅く、閉経が早かったことを考慮しますと、昔の女性は現代女性に比べ300回も月経が少なかったという試算もあるほどです。それで昔の女性は何の問題もなかったわけですから、例えば連続投与で10年間月経が無いという期間を過ごしたとしても12×10=120回の月経が無いだけなのです。むしろ、現代の女性はあまりにも過剰な月経を経験させられているという言い方さえ出来ますので、当初は周期投与で効果が今一つの方に勧めてきました連続投与ですが、今後は主流になっていきます。
その他、確認ですが、低用量ピル連続投与中に月経が無いことで月経血や子宮内膜が子宮内にたまることはありません。低用量ピル連続投与の安全性や、血栓症リスクに、周期投与に比べ有意な差はありません。またピル服用中止後の月経再開、妊孕性の回復は周期投与と同じで、連続投与終了後94.7%が2カ月以内に月経再開または妊娠することが確認されています。

とりあえず、現在周期投与中の方で、消退出血前後に不快な症状(痛み、量、PMSなど)がある方は連続投与という選択肢がありますので是非ご相談下さい。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.09更新

思春期からの低用量ピルについてもう少し。

まず低用量ピル内服中に月経量が減少、あるいは月経が来なくなって心配される方がしばしばおられます。受精卵が着床しなかった場合の子宮内膜が排出されるのが月経血ですが、これはピルに子宮内膜を厚くしないという作用があるためで、服用をやめれば戻ってきますので心配することはありません。また月経をデトックスのように感じておられる方が多くおられ、月経が無いことで月経血や子宮内膜が子宮内にたまってしまうのではと心配される方も多いですが、これも明らかに勘違いですね。元々低用量ピルの作用で内膜は薄くなっているわけですから、無いものが出ないのは理にかなったことです。
それどころか、最近では低用量ピルをずっと飲み続ける連続投与という方法が主流になりつつあります。ずっとと言いましても、具体的には約3カ月飲み続け、一度月経を起こしてもう3カ月というリズムです。詳しくはまた別の機会にでもと思いますが、このように、医学的には低用量ピル服用中、毎月月経が来る必要ありません。ちなみに連続投与の安全性や、ピル服用後の月経再開、妊孕性は通常の使用方法と同じですし、むしろ連続投与の方が月経量改善、月経痛改善に効果が高いという研究結果も出始めています。
一般の方も含めた調査で割り出された試算ですが、わが国では月経随伴症状のために1年間で約7000億円!!もの経済損失があるとのことです。これは月経痛などの症状により欠勤を余儀なくされたり、仕事のパフォーマンスが下がったりすることが原因でしょう。また女性の社会進出、特に昇進への影響は明らかになっています。これはもちろん中高生も同様で、海外のデータになりますが月経困難症のある9-18才の方の調査では、月経困難の無い方に比べ欠席する割合が約4倍になるという研究結果が出ました。海外では高校生にも生理休暇をとの動きもあるようですが、日本はまだまだですね。休むにしても、特に担任が男性であると言いにくいということもあるでしょう。また部活の顧問が女性なのに理解がなく、やる気が無いと判断されレギュラーを外されたなんてこともありました。お母さんはじめ女性の方が厳しいかもしれません。頭ごなしに我慢しなさいとか、怠けてるとか言わないで、どうか理解してあげるためにも一度医療機関を受診させてください。いずれにしても学業・部活等に支障を来すことはもとより、欠席日数が増えることで受験の際の内申点に影響が出るのではという心配も生じます。

月経困難で受験勉強に集中できないことを避けるため低用量ピルを開始したところ、生理痛で学校を休むことが無くなり、さらに受験日当日に月経があたるのを避けるため月経移動ピルで対応し受験に成功できたとか、同様に部活の練習・大会でのパフォーマンスが維持できたなどと喜んでいただくことはしばしばです。

方法は山ほどあります。ありますが、患者さんに合わせてオーダーメイド的に対処しないとうまくいきません。まずは良く分かっている医師のいる医療機関を受診してくれるといいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.02更新

今日は思春期から低用量ピルを始めるにあたり、皆様からご質問が多い点についてお話しましょう。

まず、一般的に想定されている初期の副作用として、嘔気、嘔吐、頭痛、不正出血などがあります。生活に支障を来すほどの症状がありましたら、ピルの種類を変えるなどお話を伺いながら対処して参りますので遠慮なくご相談下さい。ただしこのような飲み始めの不都合は、飲み始め2~3カ月もしますと無くなってくることが多いですので、可能なら頑張って頂くと良いと思います。また長期服用すると血液の凝固能が高まる可能性があることも重要な副作用として挙げられます。詳しくは以前のコラムでお話しましたのでそちらも参考にしていただきたいですが、低用量ピルの長期服用で血栓症を発症する確率は0.05%程度、さらに当院では定期的な血液検査で確認しながら安全にお使いいただいておりますのでご安心を。ただ残念ながら、今はネット等で出所不明のピルを個人で入手し、医師のチェックなしで使っている方もおられるようです。ご自身の健康のためにも定期的に血液検査をしながら、医師の管理の元使って頂くことが重要です。一度失った健康を取り戻すのは容易なことではない場合が多いですから。
その上で思春期のお子さんにお使い頂く際、心配される方が多いのは骨形成に対する影響です。2023/11/10のこのコラム、更年期のところで詳しく説明しましたが、女性ホルモンであるエストロゲンには骨の新陳代謝を調整する働きがあります。ですから骨が盛んに形成される時期にはピルを含むエストロゲン製剤は使いづらいわけですが、初経後には成長期の骨成長が終了していると考えられるため骨形成に関しての心配はありません。前回紹介した、「初経後3カ月が経過すれば安全に使用できる」というWHO(世界保健機構)等の見解はそのような意味でもあります。むしろ骨形成には適切な量の運動が不可欠なので、月経痛等で動かなくなることが骨の成長に良い影響を与えないということは十分に考えられることです。
またピルは避妊でお使い頂く方が多いお薬ですので、ピルで妊娠できなくなることを心配される方がものすごく多いです。もちろんピルには高い避妊効果がありますが、妊娠をご希望される時期になったら服用を休止することで必ず妊娠する力は戻りますのでこちらもご安心を。むしろ、これまで何度も述べましたが、ピルは妊娠する力を維持するためにも早くからの使用して頂きたいお薬です。
さらに都市伝説的に「ピルは太る」というのがあるようですが、完全な都市伝説です。ただしピルによっては「むくみ」が出る場合があります。その場合はピルの種類を変更すれば改善しますし、むしろむくみの改善にピルを処方することもあるくらいです。またニキビが多くなってしまう方もおられますがこちらも同様です。ニキビの改善に有効なピルがあります。

このように、基本的にはピルは大変に安全なお薬ではありますが、数あるピルの中で適切なピルを選択していくことが大切です。良いお薬ですので、専門知識と多様な患者さんへの処方経験を持つ専門医の管理の元、適切かつ安全に使用して頂きたいです。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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