ドクターコラム

2023.03.06更新

80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症
そのうちの約2割が重症化し「帯状疱疹後神経痛」で悩まされる

子どもの頃によくかかる病気の一つが水ぼうそう(水痘)です。子どもの時にこの水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した人は、この時にこのウイルスに対する免疫を獲得するのですが、この獲得した免疫は年齢とともに少なくなってしまいます。さらに残念なことには、そのときのウイルスは死んでいなくなったのではなく長い間身体の中の神経節に潜り込んで隠れているので、一度、帯状疱疹になった人でも、体の免疫力が低下すると抑えられなくなりウイルスが再活性化し、再び発症する可能性があります。これが「帯状疱疹」です。

本日はこの帯状疱疹の発症を予防するワクチンについてお話します。

帯状疱疹が発症すると、身体のどちらか半分の神経の通っている部分に、帯のように皮疹が生じることから「帯」状疱疹と呼ばれます。はじめはピリピリチクチクした痛みから始まり、しばらくするとその部分が赤くなり、やがて水ぶくれになって神経痛のような激しい痛みをともないます。いちばん多いのは肋間神経のある胸から背中にかけてです。顔面にある三叉神経に沿って現れる場合は、失明や顔面神経麻痺をともなうこともあるので特に注意が必要です。この他、下腹部、腕、足、おしりの下などにも現れます。

痛みが始まってから水ぶくれが治るまでの間は、通常約3週間~1ヵ月です。水ぶくれが治った後も長期間にわたってしつこく痛むことがあります。これは神経が損傷されることで、皮膚の症状が治った後も痛みが残り「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれ高齢者に多いものです。PHNは、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」痛みが特徴です。治療に半年~1年以上かかることもあります。日本で毎年60万人がかかる決して珍しい疾患ではありません。

このように帯状疱疹は加齢、病気、疲労、ストレスなどで身体の抵抗力が落ち、おとなしかったウイルスが再び活動し始めることで起こります。日本人成人の90%以上はこのウイルスが体内に潜伏していて、50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。そして50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、なんと約2割がPHNになり、長期間、疼痛に悩まされることが分かっています。
また米国の調査ではありますが、 50歳以上で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された人は、診断されなかった人と比較して、帯状疱疹の発症リスクが高い可能性があることが示唆された報告もあります。

そこで、発症や重症化を予防するために開発されたのが「帯状疱疹ワクチン」です。帯状疱疹ワクチンを発症前に接種しておくことで免疫の強化を図り、帯状疱疹にかかりにくくするほか、仮に帯状疱疹にかかったとしても重症化を予防でき、「帯状疱疹後神経痛」になりにくくする効果もあります。

「帯状疱疹ワクチン」は、現時点では帯状疱疹になりやすい50歳以上から接種することが可能です。
このワクチンには、不活化ワクチンの「シングリックス」と、生ワクチンである「弱毒生水痘ワクチン」の2種類がありますが、当院ではGSK製の帯状疱疹ワクチン「シングリックス®」を採用しました。
その理由は、
①シングリックス®の帯状疱疹発症予防効果は非常に高い
:発症予防効果が50歳以上で97%、70歳以上で91%(「弱毒生水痘ワクチン」は60才以上で51.3%)
②帯状疱疹後神経痛の予防効果も非常に高い
:70歳以上での神経痛予防効果は85.5%(「弱毒生水痘ワクチン」は60才以上で66.5%)
③シングリックス®は帯状疱疹を長期に予防する
:50歳以上の成人の試験では、少なくとも10年間は80%を超える有効性が確認(「弱毒生水痘ワクチン」は8年目に31.3%)

良いことばかりではなく、シングリックス®は1回22000円~25000円で接種されていることが多く、2か月あけて2回の接種が必要。そのため、十分な免疫を作るのに4~5万円の費用がかかります(「弱毒生水痘ワクチン」は1回のみで8000円くらい)。ただし、東京都内では自治体からの助成(港区では1回あたりシングリックス®15000円※生活保護受給者等1回当たり2万2000円)が出始めていて、市川市周辺でも追随してくれることを期待しています。
また、シングリックス®は弱毒生水痘ワクチンよりも注射部位の腫れや赤み、発熱や頭痛などの頻度が多くなっています。

以上、帯状疱疹ワクチンについてお話させて頂きました。決して少ない病気ではなく、予防ワクチンが出来たことは大変に喜ばしいことと思います。一度発症してしまいますと長い間痛みに苦しむ方々を多く診てきましたので、地域の方々にはなるべく多くの方に接種させて頂きたく、当院では1回20000円で接種させて頂くことにしました。是非検討してみて下さい。

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2022.05.27更新

性感染症について

-若い女性に急激に広がっています。自分だけは大丈夫だと思わないで!-

あなたは性病にかかるような方ではないでしょう。またあなたの彼もそのような方ではないでしょう。でも彼の前の彼女はどうでしょう?その彼女の前の彼はどうでしょう?性感染症は人から人へ感染していきます。まずは現時点でご自身に感染が及んでいないかのチェックを受けて下さい。

性感染症(STD:Sexually Transmitted Diseases)は、性行為により感染する病気のことです。特に女性の場合、症状を感じにくいものが多く、感染に気づかないでいると知らない間に体がむしばまれていきます。

以前このコラムで子宮頸がんの原因となるHPVについて、早くワクチンを接種して頂きたいと述べました。今日は、このところ大変に頻度が高くなっている代表的なSTD、クラミジアについて考えていきましょう。

□クラミジア
感染したまま放置すると、クラミジアが体の奥へと進んでお腹の中に様々な炎症を引き起こします。具体的には、卵管炎や卵巣炎、骨盤腹膜炎、さらには肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群といいます)を発症し、まずは生理痛、腹痛、発熱の原因となります。

卵管炎をおこすと、卵管内が癒着して卵胞をうまく取り込めず、不妊症、子宮外妊娠の原因になりますし、クラミジアに感染したまま出産すると、赤ちゃんも感染し赤ちゃんに肺炎、結膜炎などの症状が出ることがあります。
卵巣炎は排卵痛の原因となりますし、さらに感染を放置し進みますと、骨盤腹膜炎、肝周囲炎という大変な腹痛の原因になります。肝臓は子宮・卵巣よりもかなり高い位置にありますが、クラミジアの感染はお腹の上にまで及ぶ強いもので、急激な上腹部痛の原因が実はクラミジアによる強固な癒着が肝臓まで及んでいたためであった、ということは私たちがよく経験することです。

HPV,クラミジアのほかにも、淋菌、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)などなど、あなたの健康、今後の人生に大きな支障をきたす可能性のあるSTDがあります。感染初期にはほとんど症状が出ないため、感染の有無は検査をしない限り分かりません。検査は簡単な血液検査とおりもの検査だけで短時間で済み、痛みを伴うものではありません。ぜひ検査を受けて下さい。感染を放置してその後の人生で大変な苦しみを背負うことになってしまった患者さんをたくさん見てきた私たちからのお願いです。

当院では、上記の内容をセットにした検査(8640円税込)を受けていただくことが可能です。
気になることがある方やご心配の方、安心を得たい方、是非ご自身の健康のためにご利用ください。

 

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2021.12.10更新

~メルスモン注射のおはなし~

 

女性の40から50歳代は、女性ホルモンの分泌低下に伴い、ほてりやイライラ、のぼせ、不眠など何となくこれまでにない体調の変化を感じることが多くなります。

この更年期障害に対しては、漢方療法やホルモン補充治療などがありますが、漢方の効果が今一つであるとか、漢方、ホルモン療法に抵抗がある方には、当院ではプラセンタ療法(メルスモン注射)を行っています。

 

プラセンタとは「胎盤」のことです。胎盤には細胞を育て、活性化させるたくさんの因子、栄養素が豊富に詰まっています。プラセンタエキスとはヒトの胎盤から抽出されたエキスの有効成分のことで、このプラセンタエキスを注射することにより、プラセンタが体内にとりこまれ効果を発揮するといわれています。

 

メルスモンは医療用に使われているプラセンタ注射薬で、厚生労働省で医療品として認可されています。

病気の治療として更年期障害の場合、年齢45歳~59歳の女性の方については保険適応になります。費用は普通の治療と同じように保険の範囲内で行います。保険適用の場合、初回は1000円程度、2回目以降は500円程度で週2~3回の注射となります。

また美容目的でも、肌の代謝促進の作用から、しみ・しわの改善、ニキビやアトピー等トラブル肌の症状緩和、また白髪の減少などにも効果が期待されています。

保険適応外の場合、(美容目的等)自費となり初回3300円、2回目以降は1500円となります。

初回は医師の診察がありますが、2回目以降は注射のみでの通院が可能です。(症状の確認のため診察は定期的に行います。)

 

※プラセンタ(メルスモン)注射を受けると献血ができなくなりますのでその点をご承知おきください。お手数ですが同意書を取らせていただいております。

お気軽にご相談ください。

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2021.10.25更新

当院で子宮頸がん予防ワクチンの接種を再開します。

日本国内の子宮頸がんの患者さんは、年間13,000人程度(2017年)、亡くなる方は、年間2,800人程度(2018年)と報告されています。

特に若い年齢層(20~39歳)で患者さんが増えており、年代別にみた患者さんの数は、20代後半から増えていき40代でピークを迎えます。

つまり、まだ小さいお子さんをお持ちの年代の若い女性を襲うがんなのです。

 

子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスが90%以上の確率で関わっています。

このウイルスは一般に性行為を介して感染することが知られており、海外の報告では性行為の経験がある女性の50~80%が、生涯で一度はHPVに感染すると報告されています。

 

したがいまして、子宮頸がんを予防するには、感染前にHPVワクチンを接種することが大変に有効な方法となります。

そこで性行為の経験のまだない内に接種することで有効性が高まるため、小学校6年生~高校1年生になる年度に公費でワクチン接種を行えるようになっています。

しかし、かつてHPVワクチン接種後に、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動等を中心とする「多様な症状」が起きたことが報告され、2013年以降、長い間日本ではこのワクチン接種が事実上中断されていました。

この間、ワクチン接種を継続していた海外では圧倒的な子宮頸がん罹患者の減少がみられ、オーストラリアでは2028年までに子宮頸がんが撲滅されるとの予測が立つほどに至っています。

このように世界中で日本の女性だけが取り残されたまま年月が経ってしまいましたが、この間、日本でも積極的勧奨はしないものの、定期接種(国の無料ワクチン接種プログラム)は継続しています。

また長年の研究調査で、ワクチン接種に伴う「多様な症状」に「ワクチン接種との因果関係がある」という証明がなされていないことから、女性の健康を守るという観点からも、当院でHPVワクチン接種再開を決定した次第です。

なお、ワクチンにはガーダシルⓇとシルガードⓇ9があります。

HPVには100を超える型が判明していますが、子宮頸がんの原因となるHPVの型の内、ガーダシルⓇには65.4% シルガードⓇ9には88.2%の予防効果が認められています。

現在、定期接種(国の無料ワクチン接種プログラム)の対象になっているのは、ガーダシルⓇのみです。

シルガードⓇ9は諸外国では公費負担となる国が増えていますが、日本の現状では自費(3回接種で10万円)となります。

よくご検討ください。

なお、シルガードⓇ9につきましては、全例登録システムに加入頂き、接種後もより注意深く観察させていただきます。

特に来年高校1年生になる女子におかれましては、3回の接種を定期接種(無料)として完了するには来年9月中に初回接種を開始する必要があります。(ガーダシルⓇ自費接種は3回で5万円)

 

以上、様々、ご不安な点もあろうかと存じますが、気軽にご相談ください。

 

 

投稿者: 医療法人社団凌雲会

前へ
スタッフブログNEW Babies献立日記